カメラのむらかみさんは、白老でお世話になっているお店の一つ。移住して1週間もたたないころ、散歩をしていると、ふと目に入ったまちのカメラ屋さん。吸い込まれるように中に入りました。
出迎えてくれたおじいちゃん、村上和義さんの笑顔にほっと一安心。右手奥の棚一面に並んだ、昔のカメラコレクションの膨大な数に圧倒されました。お店の入り口の方へ戻ると、「毎日絵を描いているんだ」と言いながら、デッサン途中の絵を見せてくれました。
これまでに描いた枚数は、何と9000枚を優に超えるのだそう。階段にびっしりとスケッチブックが飾られているのを見せてもらい、さらに圧倒されたのでした。「みんなは上手に描こうと思うから描けない。毎日描くのだけで楽しいのさ」。和義さんの言葉には楽しさと説得力がありました。
カウンターに立っていた息子さんの英明さんは、にこにこしながら移住者の私の話を聞いてくださいました。「どこから引っ越してきたの?」と聞かれ、「東京です」と答えて何気なく最寄り駅の名前も言うと、「あっ! そこ僕も住んでいたよ~!」とのこと。お互いにびっくりし、東京時代のご近所トークをしました。その流れで、本屋をやりたいという話をすると、いろいろな相談に乗ってくれました。
何かとご縁があり、面白い人も多そうだなぁ…と思って移住した私の直感が、ぴたりとハマっていたことを実感した出来事でした。
それから1年たった今でも、定期的に訪れては絵を見せてもらったり、お話をしたり。とてもお世話になっている居心地のよい場所です。
(またたび文庫店主・白老)