山登りを始めた。いや、山登りなんて言うと山岳会の人や名だたる山を登っている人にお叱りを受けそうな初心者中の初心者だ。低くて、ハイキング感覚で登れそうな山を選んでいる。それでも頂上にたどり着いた時の爽快感は何事にも代え難い。もっと早くに挑戦していたらと少し後悔している。
きっかけはかかりつけ医の山歩きはいい、という言葉だ。まずは形から入った。靴を選んでリュックの大きさをどうしようか。雨がっぱは必要か。ペットボトルを入れるケースは。食料は要るのだろうか。ベテランの登山愛好者のアドバイスを受けてそろえ、いざ出陣した。
当初は軽く考えていた。体力に少しは自信もあったし、体を動かすことは嫌いではない。だが、甘かった。高校時代の部活で付けた体力の貯金など残っているはずもなく、50メートルで息が切れた。その横を小学生らしき男児が走って登っていく。玉のような汗をかき、何度も休憩しながら登り切った。そこから見えた眼下の街並みは絶景だった。
総務省の統計で登山者の割合は40代~60代で7割を占める。コロナ禍で登山ブームに拍車が掛かったという。あれほど大変だったのにまた登ってみたくなる。不思議な魅力を実感している。 (昭)