1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(87)について、静岡地検は10日、再審公判で有罪立証する方針を表明した。弁護側は早期の無罪判決を求めているが、審理が長期化する見通しとなった。
再審公判でも再審請求審と同様、事件の約1年2カ月後に現場近くのみそ工場タンクで見つかり、有罪の決め手となった「5点の衣類」が主な争点になる。
検察側が静岡地裁に示した立証方針では、5点の衣類が袴田さんの犯行時着衣だとした上で、「専門的知見を正しく評価すれば、1年以上みそ漬けされても付着した血痕に赤みが残ることは何ら不自然ではない」と改めて主張。「捏造(ねつぞう)された証拠だとする(弁護側)主張には根拠がない」とした。
一方、弁護側は再審公判での冒頭陳述の骨子案を公表。「再審請求審で、血痕の色などによって犯行時の着衣ではないことが明らかになった。事件とは無関係の捏造証拠で、袴田さんのものでもない」と訴えた。
衣類に付着した血痕には赤みが残っていたが、東京高裁は3月、1年以上みそ漬けされることで血痕の赤みは消えるとした弁護側の実験結果を認め、再審開始を決定。赤みが残るとする検察側の主張は「化学的論拠に基づかず抽象的」と退け、衣類について捜査機関による捏造の可能性にまで言及した。
検察側は高裁決定に対する特別抗告について、「承服し難い点はあるが、申し立て理由があるとの判断に至らなかった」と断念し、再審が確定。翌4月に静岡地裁で開かれた3者協議で、再審公判での立証方針の決定に3カ月の猶予を求め、今月10日を期限に検討を進めていた。
改めて専門家に意見を求めたほか、事件当時の証拠を精査するなどした結果、再審公判での有罪立証は可能と判断したとみられる。