マイナンバー関連の相次ぐ誤登録問題は、個人情報保護委員会によるデジタル庁への立ち入り検査に発展する方向となった。トラブルの再発防止に向け、政府は原則秋までに関連情報の総点検を完了する方針を示したばかり。制度を所管する官庁への検査となれば、イメージダウンは免れない。自治体からは総点検の作業負担に懸念の声が上がっており、信頼回復への道は険しさを増している。
「現時点で何か決まっていることはない。個人情報保護委員会の求めに応じて適切に対応する」―。河野太郎デジタル相は7日の閣議後記者会見で、硬い表情でこう語った。同委は公金受取口座の別人への誤登録問題に関し、個人情報に関する重大な事案と判断した。
政府は当面、総点検の作業を急ぎ、信頼回復につなげたい考え。ただ、具体的な手法はこれからで、大阪府の吉村洋文知事は「どういう手順に基づいてチェックするのか、速やかに出してほしい」と注文を付ける。秋までの点検完了という政府方針にも「無理がある」(佐竹敬久秋田県知事)との不満が漏れる。
全国知事会の平井伸治会長(鳥取県知事)は6日、「もっと地方側とコミュニケーションを取ってほしい」と政府に要望。自治体側との調整を担う総務省は「総点検の必要な範囲がこれから出てくる。自治体の作業負担を見極め、どのようにサポートするのか考えたい」(松本剛明総務相)としている。
相次ぐトラブルへの不信から、各地ではマイナンバーカードを返納する動きも広がる。政府は2024年秋に健康保険証を廃止し、カードと一体化した「マイナ保険証」に切り替える方針。関係各省はカードを返納しても、個人情報とマイナンバーのひも付けを解除することはできないなどと説明するが、「国民が不安を感じている中での制度移行は決して望ましくない」(服部誠太郎福岡県知事)との声は根強い。