人との対面が基本の記者の仕事なら何かひらめいてそこに赴くと今まさに話を聞きたかった人が居合わせるようなことがあり、「予感」が業務効率を特段高めるときがある。近頃はそうしたひらめきに事欠き、先ほど小職自身が実行したことさえ忘れてしまうずっこけばかりだ。
1990年代初頭、東京ドームが会場の社会人野球・都市対抗本大会に出た白老町代表、大昭和製紙北海道に密着取材をした。当時の監督は我喜屋優さん。現在、沖縄の興南高校理事長で今夏の同県大会でも指揮を執り続けている。大昭和チームには選手とスタッフ全員で遠征先の宿周辺を散歩する慣習があった。ついていくと我喜屋さんに「第六感とは何か」と問われて答えに窮してしまった。いわく朝起きて天気がどうか空を見渡して鳥のさえずりを聴き、路傍の花に触れて匂いを確かめてから朝ご飯を味わえ―。
朝の散歩で視・聴・嗅・触・味の五感を研ぎ澄ませば、野球のワンプレー先を読む「第六感」が生まれる―。そう言った我喜屋さん率いる興南は2010年に春・夏甲子園を連覇した。来週には都市対抗本大会が東京で開幕し、各年代王座を懸けた野球が盛りとなる時期、小職は昔の”路上講義”を思い出し、いまさらながら心掛けを実行してみる。(谷)