岸田文雄首相は5日、北朝鮮による拉致被害者の曽我ひとみさん(64)と首相官邸で面会した。首相は「多くの方々の帰国が実現していないことは痛恨の極みだ。被害者や家族が高齢となる中、時間的制約がある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人権問題だ」と強調。日朝首脳会談の早期実施に向け、自身直轄の「ハイレベル協議」を行いたいと説明した。
現職首相と曽我さんの面会は安倍晋三政権下の2018年7月以来。曽我さんは「日朝トップ会談を一日も早く実現させ、被害者を全員取り戻していただきたい。それができるのは岸田首相だ」と伝え、首相は「拉致問題は政権の最重要課題だ。私自身が先頭に立って取り組む」と応じた。
曽我さんは1978年、新潟県真野町(現佐渡市)で母ミヨシさん=拉致当時(46)=と共に拉致された。曽我さんは02年に帰国したが、ミヨシさんの安否は不明。曽我さんは「毎日心配でならない。45年も会えないことは本当に理不尽だ」と訴えた。
曽我さんは首相に要望書を手渡し、風化防止に向けた活動や、拉致の可能性が排除できない「特定失踪者」家族への丁寧な対応も求めた。面会には渡辺竜五佐渡市長が同席した。