松野博一官房長官は3日の記者会見で、首相経験者の国葬について「行うことを決定した場合は国会に説明し、終了後に概要を報告することが適当だ」と述べ、実施前後の国会報告が必要になるとの認識を示した。一方、国葬の対象となる首相経験者の基準に関しては「時の内閣で責任を持って判断していく」との考え方を示すにとどめた。実施決定に当たっての国会承認の必要性には踏み込まなかった。
安倍晋三元首相の死去から8日で1年を迎えるのを前に、国葬の実施について一定のルールを示したものだ。松野氏は、実施前後に国会に報告するとの運用について「閣議決定する予定はない」と述べた。
街頭演説中の銃撃による安倍氏急逝を受け、政府は昨年9月、「国の儀式」を所掌事務とする内閣府設置法に基づき「国葬儀」を実施。これに対し、「法的根拠があいまい」「保守派への政治的配慮」との批判が相次ぎ、国葬を巡る国論は二分された。
政権への逆風も強まり、ルール作りに否定的だった首相は同10月の国会答弁で「一定のルールを設けることを目指す」と表明した。
政府の有識者ヒアリングでは国会の関与の要否について「国会に対する説明は特に必要ない」「両院で国葬儀実施を議論し、決議すべきだ」などの両論が示された。対象者の基準作りについて「困難」との意見が目立つ一方、首相が国会に諮ることなく閣議で実施を決めたことには「民主的プロセスを踏むべきだった」との指摘もあった。
衆院の与野党協議会の検証は、国会の適切な関与が必要との見解でおおむね一致した。
松野氏の会見発言について、政府関係者は「政府の公式見解だ。有識者聴取と国会の議論の共通意見を抽出した」と説明した。
共産党の小池晃書記局長は3日の会見で、「報告を聞くだけでは、解決にならないのではないか。国葬にふさわしいか、きちんと議論が必要だ」と述べた。