岐阜市の陸上自衛隊射撃場で自衛官候補生の男(18)=殺人容疑で送検=が小銃を発射し、隊員3人が死傷した事件で、男が死亡した菊松安親1曹(52)=陸曹長に昇進=を撃った理由について「手を上げなかったから」などと説明していることが3日、関係者への取材で分かった。男は射撃前に「動くな」と周囲を威嚇しており、菊松さんが指示に従わないと判断した可能性がある。陸自警務隊は4日にも男を菊松さん殺害容疑などで再逮捕し、詳しく調べる方針だ。
射撃訓練の順番を待っていた男は規則に反して無断で弾倉を銃に装着。「動くな」と叫び、制止しようとした八代航佑3曹(25)=死亡、2曹に昇進=を撃ち、さらに後方の弾薬置き場にいた菊松さんら2人に発砲した。
菊松さんは2発撃たれており、1発目は左前頭部に命中。2発目は背中から撃たれ、銃弾は胸に貫通していた。死因は失血死だった。
関係者によると、男は「銃弾を奪って外に出る計画で、当日思い付いた」と供述。弾薬係の菊松さんらを襲い銃弾を取ろうとしたとみられ「伏せたり、手を上げたりしなかったので、抵抗されると奪えなくなると思った」などと話し、無抵抗を示すポーズをしなかったことが引き金で撃ったという趣旨の説明をしているという。男は「倒れていたので背中から撃った」と射撃を認めているが、明確な殺意は否定している。
一方で、警務隊などは男が菊松さんの頭を撃った後、とどめを刺すように倒れた背中に2発目を撃っていることから男に強固な殺意があったと判断している。男はほぼ黙秘を続けているといい、再逮捕して、銃弾を奪う目的など詳しい動機の解明を目指す。