苫小牧産ホッキ貝から道の基準を上回るまひ性毒素が検出され、7月1日に予定していた夏漁解禁が先送りされた。水揚げ日本一を誇る特産品とあり、漁業者はもちろん、飲食、観光など各関係者の落胆は大きいが、操業や出荷の自粛は、安全を最優先する裏返し。基準値を下回り続け、漁が始まる日を待ちたい。
今回は事前調査で1グラム当たり3・1MU(マウスユニット)の毒素が確認された。本紙で以前も説明したが、MUという単位は、ネズミに毒素を腹腔投与、つまり注射で体内に直接入れ、死ぬ量が1MUであることが由来。人の致死量は3000MU以上とされる。
そもそも貝毒は、貝が毒性プランクトンを食べ、内臓に蓄積することが原因。黒くて食感も悪い「うろ」の除去は、ホッキをさばく際の基本。貝類の肝独特の風味を好む人もいるが、ホッキは砂を含んでいたり、臭みがあったりと、まず食べない。規格は厳格に運用されている。
ただ、地球温暖化に伴う海洋の変化は心配が尽きない。同じくプランクトンを起因とする赤潮被害、秋サケの記録的不漁に代表される魚種の変化など、本道を取り巻く漁業環境は厳しさを増している。重要な産業の漁業を守るため、できることはないか、考えたい。(金)