白老町の森野の山で暮らす堀尾さんご夫婦に出会ったのは、こちらへ移住する前の2022年2月のことでした。
堀尾博義さんは、86歳のおじいさん。役場を定年退職された後、周囲に民家のない森野の山に土地を買われ、自分で家を建て、森林の整備をしながら暮らしています。その名も「仙人の森」。
当時の私は東京住まいで、人や建物に囲まれるのが普通の生活をしていました。そんな中、白老に住む友人が「仙人の森」へ連れて行ってくれることに。仙人…という語感から、ひげが長くて何だか怪しいおじいさんなのかなぁと思いながら会いに行きました。
東京とはまったく違う、雪で真っ白になった山あいの景色。ぽつんと建っている、貨物用のコンテナを改造した家。初めて見る「森の生活」の風景に目を奪われていると、出てきたのは真っ赤なモンベルのアウターを羽織った堀尾さんでした。背筋をしゃんと伸ばし、家の目の前にやって来る鳥たちに餌付けをするその動作は、とても洗練されていました。忘れられない光景です。
堀尾さんの元へは今でも2~3カ月に1回ほど訪れます。その時に聞かせてくれる話は毎回違う面白さがあります。森づくり、牛、戦争の時のこと、俳句、白老について。「60歳までは勉強ですよ」と笑いながら話す笑顔は、いつもまぶしく見えます。
最初に思い描いていた「気難しい仙人」のイメージを超え、教養とユーモアのある長老のよう。白老での生活を豊かにしてくれる方です。
(またたび文庫店主・白老)