【ニューヨーク時事】米沿岸警備隊は22日午後(日本時間23日未明)、大西洋に沈む豪華客船タイタニック号の見学ツアー中に行方不明となっていた潜水艇「タイタン」の破片を海底で発見したと発表した。周囲の圧力で内側に押しつぶされる「破滅的な事故」が起きたとみられ、乗員5人の生存は絶望視されている。ツアー運営会社「オーシャンゲート」も声明を出し、乗船していた全員が「亡くなったもようだ」と明らかにした。
記者会見した沿岸警備隊などによると、22日朝(同22日夜)、水深3800メートルに沈没するタイタニック号の船首から約490メートル離れた場所で、カナダの無人探査機が、タイタンの船尾部分の破片を発見。前方、後方も含めて「五つの主要な破片」が見つかったという。
タイタンには、オーシャンゲート社のストックトン・ラッシュ最高経営責任者(CEO)、「ミスター・タイタニック」と呼ばれるフランス人の海洋専門家の男性、英富豪の男性、パキスタンの財閥一族の男性とその息子が乗っていた。同社は声明で「彼らは真の冒険家だった。彼らを失ったことを深く悲しんでいる」と述べた。
タイタンにいつ不具合が生じたかは不明。ただ、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは22日、タイタンが消息を絶った直後、敵国の潜水艦探知を目的に設計された米海軍の極秘音響システムが「異音」を検出していたと報じた。音の発生場所はタイタンの潜水現場近くだったといい、この情報は捜索隊にも伝えられたという。
捜索隊は海底での無人探査を続ける。しかし、現場は「過酷な環境」であり、回収作業の見通しは立っていない。
タイタンは18日朝に潜水を開始。約1時間45分後に連絡が取れなくなった。搭載されていた最大96時間分という酸素は、22日朝に切れたとみられていた。
捜索隊は、水中で「物をたたくような音」を探知していたが、タイタンとは関連がなかったとみられる。