政府は16日の持ち回り閣議で、経済財政運営の基本指針「骨太の方針」を決定した。子ども・子育て政策を「最も有効な未来への投資」とし、少子化反転のため2030年代初頭までに国の予算の倍増を目指すと明記。リスキリング(学び直し)支援など労働市場改革による構造的な賃上げを掲げ、「分厚い中間層を復活させる」と強調した。
岸田文雄首相は同日開いた経済財政諮問会議などの合同会議で、「子ども・子育て政策を抜本的に強化し、少子化トレンドを反転させる」と述べた。
骨太方針では、少子化に歯止めをかけなければ「わが国の経済・社会システムを維持することは難しい」と危機感を示し、30年代に入るまでを反転のラストチャンスと表現。来年度から3年間の「加速化プラン」では、歳出改革などで財源を確保し、児童手当拡充や出産・医療費といった負担の軽減、男性の育児休業取得などを推進する。子ども・子育て予算倍増の財源については「社会全体でどう支えるかさらに検討する」との表現にとどめた。
政府は16日、岸田政権の看板政策「新しい資本主義」実行計画の改定も決定し、労働市場改革の具体策などを盛り込んだ。学び直しの支援金などについて、企業経由の支給が7割超を占める現状を改め、個人への直接給付の割合を5年以内に5割超に引き上げる。労働移動の円滑化を阻害しているとして、勤続20年で税負担が大幅に減る退職所得課税についても見直す。
財政について、骨太方針ではコロナ禍で膨らんだ歳出構造を「平時に戻していく」と明記。政府は25年度に、国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化する目標を維持するが、骨太方針には昨年に引き続き年限を記さなかった。また、防衛費増額のための増税開始時期について、「24年以降の適切な時期」としていたが、自民党の提言を受け、25年以降とすることも可能となるよう「柔軟に判断」と記載し、先送りを示唆した。
脱炭素など重点分野へ政府が複数年度にわたって投資し、民間資金を呼び込む方針も示した。経済安全保障上の重要物資となる次世代半導体などへの投資を拡大し、日本が国際サプライチェーン(供給網)の中核となる目標を掲げた。
現預金に偏る2000兆円超の家計金融資産を投資に向けるため、運用会社の能力向上などの政策プランを年内にまとめ、「資産運用立国」を実現する。文章や画像などを自動で作成する生成人工知能(AI)については、リスクへの対応を進めつつ、開発力を強化する。