旧優生保護法に基づき不妊手術を強制されたとして、道内在住の女性(80)らが国に2200万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が16日、札幌高裁であった。佐久間健吉裁判長は、不妊手術を受けたと認めなかった一審札幌地裁を支持し、原告側の控訴を棄却した。
強制不妊を巡る訴訟で、6件目の高裁判決。他の訴訟と異なり、不妊手術を受けたかどうかが争点の一つとなっていた。
原告側は、女性が約42年前に妊娠した際、知的障害を理由に親族から説得された夫が同意し、中絶と不妊手術を受けたと主張した。佐久間裁判長は不妊手術に関し、「裏付ける客観的証拠がなく、1泊の入院期間は手術が併せて実施されたことに沿わない」と指摘。優生思想に基づく旧法の規定が、個人の尊厳や法の下の平等などを定めた憲法に違反するとの評価は免れないとしつつ、訴えを退けた。
全国被害弁護団は「被害者の切なる声を黙殺するに等しく、不当判決だ」との声明を出した。
先行する5高裁はいずれも旧法の規定を違憲とし、うち大阪や東京など4高裁は不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適用を認めず、国に賠償を命じた。