先日、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターで、終生飼養のフクロウ(フクロウ目フクロウ科)が産卵しました。このフクロウは、2010年に建物に衝突し、翼の骨が折れたことが原因で自然復帰できず、終生飼養となった個体です。
通常、保護された傷病鳥は、それまで暮らしていた自然界の環境と大きく異なるため、本来の行動を取らないことがよくあります。例えば、さえずり。さえずりとは、繁殖期に主に雄が縄張りを主張したり、つがい相手にアピールしたりするための鳴き声のことですが、一部例外はあるものの、傷病鳥がさえずることはめったにありません。
そして、今回のような産卵もそうです。つがい相手もおらず繁殖に適さない環境で卵を産むという行動も、傷病鳥にはまず見られません。ですが、実はこのフクロウ、過去にも2度産卵したことがあります。20年以上になる当センターの野生鳥獣救護の記録の中で、産卵したのはこのフクロウのみです。
ちなみに皆さまは、野鳥の卵を見たことはあるでしょうか。野鳥の卵は、種によって大きさや形状、色、模様などが異なります。その理由としては、鳥の多様な生息環境や生活様式が関係していると考えられています。外敵や環境から卵を守ることが子孫を残すことにつながるため、それぞれの種によって卵は適応した特徴をしています。
では、フクロウはどのような卵なのかというと、真っ白で、まん丸に近い形が特徴です。野鳥の卵には、外敵から見つかりづらい保護色(周囲の色に溶け込んだ色)を持つ種も多いのですが、フクロウのように樹洞などの穴の中を巣にする種は、外敵からも見つかりづらいため、保護色ではなく白い卵であることが多いです。また、まん丸い形の卵は、一般的な巣では転がり落ちてしまうこともありますが、穴の中であればその危険もないのです。
今回フクロウが産んだ卵は無精卵のため、温めてもかえることはありません。何がきっかけで産卵に至ったのかは不明ではありますが、保護からもう13年目になるというのに、今も野生本来の行動を取ることに、ただ驚かされるばかりです。
現在この卵は、貴重な産卵の記録として、処置を施しセンター内で展示をしております。お立ち寄りの際は、ぜひご覧いただけたらと思います。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)