岐阜市の陸上自衛隊射撃場で男性隊員3人が自衛官候補生の男(18)=殺人容疑で送検=に自動小銃で撃たれ死傷した事件で、男が訓練規則に反して、射撃位置に着く前に無断で銃に弾丸を装塡(そうてん)していたことが16日、防衛省関係者らへの取材で分かった。
男は射撃の順番待ち中に、死亡した菊松安親1等陸曹(52)を狙って発砲したとみられており、陸自中部方面警務隊と岐阜県警は直前の2人のやりとりや事件に至った経緯を調べている。
陸自によると、隊員は射撃場内に入ってから実弾を受け取り、次に射撃する人が立つ「待機線」や、待機線に入る前に服装や銃の点検を行う「準備線」で順番を待つ。次の班が待機線や準備線で弾を弾倉に入れることもあるが、弾倉と小銃を別にしておく規則で、射撃位置に着き、許可を得て初めて弾倉をセットし、装塡するという。
男は射撃訓練が始まってすぐに、菊松1曹ら3人に発砲。射撃位置では脇に安全係や補助など隊員が複数付き、動作を監視することから、発砲は待機中に行われたとみられている。
当時は候補生より、多い数の指導隊員が射撃場に詰め、安全管理に当たっていた。ただ弾倉を差し込み安全装置を解除すればすぐに射撃可能といい、警務隊などは、男が隊員の目を盗んで勝手に弾を装塡し発砲したとみて、当時の詳しい状況を調べている。
陸自は捜査と並行して、当時の安全管理に問題がなかったかを調査。一方、事件を受けて全国の部隊で中止した射撃や爆破を伴う訓練については、安全教育や関連規則の再確認、隊員の心身の状態の把握などができた部隊から順次再開していくとしている。