先日のテレビに、一人の青年が戦車の進路をふさいで立つ、白黒の画像が映った。中国の「天安門事件」から、もう34年がたったという。事件の数年後に北京や上海を訪ねた。友好訪問団の同行取材で、自分は観光とは違うつもりだったが受け入れる側にとって、変わりはない。学生ら100万人が集まったという広場の大きさ、門の高さ、自転車の多さにカメラを向ける姿は観光客そのものだ。
現地の案内役氏に、それとなく事件のことを聴いても「何の話?」と笑って、話はすぐ打ち切られた。日本については詳しく、家電製品の性能を褒め「日本のように1台ずつ自動車を持てる生活に憧れている」と私たちの生活への羨望を隠さなかった。朝、ホテルで両替をしてもらった訪問団員が、束になった中国紙幣を手に「女子職員がカウンターにポンと投げたんだ」と苦笑い。訳を考え込んでいた。30年前とはそんな時代だった。
そして時代は変わる。今、中国は日本を抜いてアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国だ。コロナ禍の前、日本への旅行者数は国別のトップだった。土産の爆買い復活を待つ関係者は多い。軍事や外交でアメリカとの緊迫のつばぜり合いが続く。宇宙基地だって持っている。中国と日本の次の30年を想像してみる。(水)