アイヌ神謡集の著者知里幸恵(1903~22年)の生誕120年を記念したコンサートが8日、登別市登別本町2の「知里幸恵 銀のしずく記念館」で開かれた。市内外から65人が来場し、札幌市在住の歌手、豊川容子さんの歌声に聞き入った。
豊川さんはアイヌ民族にルーツを持ち、音楽ユニットnin cup(ニンチュプ=新月の前の細くなった月)のメンバーとして道内外で幅広く活動している。昨年11月には民族共生象徴空間(ウポポイ)でもコンサートを開いた。
この日はフィンランドの伝統楽器カンテレの奏者あらひろこさんと共演する予定だったが、あらさんが5月に急逝したため、あらさん主宰の教室の生徒八島紫帆さんが出演した。
子守歌「60のゆりかご」や「ウパシ ランラン(雪の日)」、アイヌ神謡集の一節を題材にしたあらさん作曲の「銀の滴降る降るまわりに」など、伝統から着想を得たオリジナル曲12曲を披露した。
豊川さんは昨年9月にも同館であらさんとのコンサートを開き、2人で再演を誓っていた。冒頭、あらさんをしのび「この場で歌わせていただくのは光栄。精いっぱい歌いたい」と語った。
白老町川沿の団体職員、乾藍那さん(36)は「美しい歌声で知里さんも一緒に聞いてくれているような気がした」と話していた。