―苫小牧港を取り巻く環境や課題について。
「運送にかかる運賃の値上げが進まないことと人手不足の二つが課題。運賃は昔から同業の過当競争で安い状況が続く。人手の問題も、作業時間が長くてつらく、かつ給料が上がらない状況では、トラックドライバーや荷役をする港湾作業員、船員はなかなか集まらない。さらにトラックドライバーは残業時間が規制される『2024年問題』も迫る。これまでは残業代をもらう前提だったが、今後はベースが上がらないと年収減になる。これまで無理していたところを、重視され始めたコンプライアンス(法令順守)を盾に運賃を引き上げ、ベースの給与増につなげたいと思う」
―港で進むカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出ゼロ)をどう考えているか。
「現時点で運送業社一社ができることは、電気自動車の導入や社屋に太陽光パネルを付けることぐらい。車や荷役機械を動かすエネルギー源がどうなるか分からず、まだイメージが湧かないところだ。インフラ整備が進まないと、車や重機、船などの『道具』を取りそろえることが難しい」
「例えば今、荷役機械はディーゼルエンジン。これが水素になるのか、バッテリーになるのか、様子見している段階だ。価格も現在の製品より高くなるだろう。減価償却するために、運賃の値上げとの兼ね合いも出てくる」
―苫小牧港に求めることは。
「市が3月に新しい津波ハザードマップをまとめた。港は最大9メートル程度の津波で浸水する恐れがある。われわれはほとんどが沿岸部で仕事をしており、大きな地震が発生すると逃げる時間がない。避難タワー建設の話も港湾地域では今のところ出ていない。人の避難をどうするかに加え、災害後に復興活動で使う重機をどう守るかも重要だ。青森県の八戸港では東日本大震災後、防潮堤の後背地を4メートルほどかさ上げし、重機が避難できるようになった。避難場所について調査を始めており、港管理組合や市と相談したい」
―今後の港の発展に必要なことは。
「苫小牧市や商工会議所などは、企業誘致をさらに積極的にしてもらいたい。(千歳市に進出したラピダスのような)半導体の企業だけではなく、さまざまな大企業が来てくれれば、われわれの仕事も増える。苫小牧のポテンシャルは高いと感じているので、千歳に負けないよう誘致が進めば。観光客を呼び込めるような名所、核となる場所の整備も進めてほしい」
ナラサキスタックス 1966年設立の苫小牧楢崎港運など複数社の統合を経て、91年に現在のナラサキスタックスに。苫小牧港の輸送基盤を支え、荷役作業や国際運送などを担う。従業員数は240人。本社は苫小牧市元中野町。