元気で健康な生活を送るために、体力は大切です。文部科学省の「全国体力テスト」によると、高齢者の体力が1998年以降向上しているのに、子どもの体力は低下していることをご存じでしょうか。
子どもの体力は1970~80年代がピークで、その後低下に転じました。ここ10年間で女子はやや改善していますが、男子は跳ぶ力や投げる力など、多くの項目で低下か横ばいの傾向が続いています。70~80年代と比べると、男女ともにまだまだ低い水準です。
子どもの体力の低さは、健康や意欲、気力に悪影響を与えます。それだけでなく、大人になったときや年を取ったときの体力低下、生活習慣病の増加、自立した生活を送るための日常生活動作の低下につながります。社会全体の健康を失うことにもなるのです。
現代の子どもの体力低下の背景には、今の大人が子どもだった頃との環境の違いがあります。遊びやスポーツ、日常生活で身体を動かす「身体活動」が減少していますし、スマートフォン利用や、座ってする遊びなどの「座位行動」が増えています。
特に新型コロナウイルスの流行で、身体活動が減り、座位行動が多くなった子どもの場合、健康にさらなる悪影響が及ぶのではないかと懸念されます。
反対に、1日の運動時間が長い、外遊びをよくする、運動部やスポーツクラブに所属している、余暇の時間に座る時間が短い―といった子どもは、体力が高いことが分かっています。
この連載では、子どもの身体活動と座位行動の実態、その効果や悪影響をお伝えします。生涯の健康につながる行動習慣を、子どもに獲得させてあげませんか。(石井香織・早稲田大教授、イラストはカモシタハヤト)
いしい・かおり 東京都昭島市出身。東京医科大大学院博士課程修了。専門は健康教育学。