2 次世代エネ供給拠点に まちの発展と切り離せない 苫小牧港管理組合 平沢 充成専任副管理者(60)

  • 未来への海図 苫小牧港開港60周年, 特集
  • 2023年6月6日

  ―苫小牧港開港から60年。現状や課題は。

   「苫小牧港は当初、工業港として期待されていたが、現在は道内貨物の半分以上を扱う物流港としての側面が大きい。2020年には(横浜港を抜き)全国3位の貨物量を誇るまでに至っている。国や道の産業発展、市民の生活を支える港となっているが、大きな課題としてトラックドライバーの時間外労働が規制される『2024年問題』や港の労働力不足などがある」

   「現在整備が進む東港の周文埠頭(ふとう)の連続バースは、トラックの走行時間の短縮につながり、『2024年問題』への対応策の一つになる。労働力不足への対応も、ターミナルのオペレーション向上や、作業をしやすい環境の整備を進める。若い世代への港の周知も進め、将来的な港に関わる労働力を確保していきたい」

   ―港のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出ゼロ、CN)は。

   「CNの推進は、道や国も進める重要な政策。組合も道内の港の先陣を切って、苫小牧港に関する団体や企業と『カーボンニュートラルポート(CNP)』検討会を立ち上げ、今年3月に『CNP形成計画』を公表した」

   「CNは社会全体の目標になり、多くの企業が供給網全体の脱炭素を進めている。今後は脱炭素化に取り組む荷主や船主から選ばれる港になる必要がある。環境に配慮した産業の創出や誘致にもつながる話。質の高い雇用の創出や所得の向上にも貢献できればと思う」

   ―今後の港湾発展に何が必要か。

   「市と港は歩調を合わせるように発展しており、切り離せないものと考えている。今後も発展するためには、一つが先に挙げた課題への対応、二つ目がポテンシャルを生かした戦略的な取り組みだ。例えばCNP形成計画の柱の一つに、『北海道や北日本の次世代エネルギーの供給拠点化』がある。苫小牧は大規模な発電所や製油所が立地し、次世代燃料のアンモニアなどの需要が想定される」

   「苫小牧は道内の石油製品の6割を扱い、各地に陸上、海上輸送するネットワークもある。充実したネットワークや既存のインフラを活用し、北日本の次世代エネの供給拠点を目指していきたい。また、北海道の「食」の輸出も重要。国際コンテナターミナル付近で食のロジスティクス(戦略的物流)機能を強化するなど、道産品を世界に送り出す取り組みにも貢献したい」

   苫小牧港管理組合 特別地方公共団体。苫小牧港開港から2年後の1965年7月、道と苫小牧市で設立した。職員は道や市からの派遣職員、組合独自採用職員で構成。道議や市議から選出された議員による組合議会(定例会は年3回)を開き、予算や方針を決議する。管理者は岩倉博文苫小牧市長。庁舎は苫小牧市入船町。

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