―苫小牧港を取り巻く環境や課題について。
「苫東では医療機器工場(カネカ)、隣の千歳市は総投資額5兆円と言われるラピダスの半導体工場、米国のウイスキー工場と進出が相次いでいる。都市の壁を乗り越え、それぞれの港、空港という機能をどう高め合っていくか、検討や連携が求められる」
「苫小牧港が競争力を維持し、発展するため、物流の需要を創出する必要がある。苫東地区など恵まれた後背地への企業・産業誘致が不可欠だ。一方、港湾労働者の不足が深刻化し、(トラック運転手の時間外労働の上限規制など)2024年問題もあり、港湾としても休息できる場所などを考えなければならない」
―苫小牧港で岸壁整備が進んでいる。
「最近、フェリーターミナルの後背地にあるヤードを見ていると、道内で行われる大きい事業の資材は必ず揚がっている。本道経済の動きがよく分かり、北海道の玄関口として役割を果たしている証しだと思う。西港、東港に公共岸壁の新増設が実現し、関係者の努力に敬意を表したい。しかし、物流事業を創出し、港湾と企業立地が連携しないと、港そのものの競争力にはつながらない。苫東などへの盛んな企業進出に併せて物流がどう動くか、そのためにどういう港でなければならないのか、議論していかなければならない」
―カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出ゼロ、CN)の取り組みも求められている。
「外部のシンクタンクに委託調査し、二酸化炭素(CO2)排出の見える化に取り組んでいる。2025年度には液化天然ガス(LNG)燃料フェリー2隻=商船三井フェリー=が苫小牧―大洗に就航予定で、LNG供給の方法を検討している。苫小牧港は国が推し進めるカーボンニュートラルポートのモデル港に指定されるかが鍵。国からの予算が今後の発展に大きく関わる」
―港湾のさらなる発展に向け、何が必要か。
「他の港湾都市は、港区の中に、市民の交流機能があるが、苫小牧は少ない。市の行政と、港管理組合の行政が二分されており、連携がより求められる。新千歳空港とダブルポート連携を深め、苫小牧港をさらにPRして利用増につなげたい」
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4月に開港60年の節目を迎えた苫小牧港。世界初の内陸掘り込み式人工港湾は、国内有数の国際貿易港へと発展し、苫小牧の暮らしや経済に欠かせない存在となった。港湾関係機関や企業の関係者に、港の現状や今後の展望などを聞いた。
苫小牧港開発 1958年設立。苫小牧西港フェリーターミナルの運営や不動産事業などを手掛ける第三セクター。96年から住宅用地として分譲するウトナイ地区は、ニュータウンに発展している。本社は苫小牧市入船町。