ヒグマは人が怖い。だから、向こうから人を襲うことはない―。そんな分析を聞いたことのある人は多いはず。分析には「もし遭遇しても背中を見せて逃げては駄目。目をそらさず、後ずさりして距離を開けて」と、生還への心得が続く。それが見直される可能性が出てきた。
「クマから接近し襲撃か」。24日付北海道新聞1面、べた白抜きの大きな見出し。上川管内幌加内町の朱鞠内湖で、釣りの男性がヒグマに襲われて死亡した事件の続報。遺体や遺留品の発見場所、襲われた現場とみられる大量の血痕の位置などから、ヒグマの方から釣り人に接近して襲い掛かり遺体などを隠した可能性がある―との見方が紹介されていた。
羽根田治著「人を襲うクマ―遭遇事例とその生態」(山と渓谷社)によると、道内で、ヒグマに人命が奪われた大きな事件としては1915(大正4)年12月に苫前村三毛別(現・留萌管内苫前町三渓)で8人が殺された事件。70(昭和45)年7月に日高山脈北部・カムイエクウチカウシ山で福岡大学の学生5人が殺された事件が有名。しかし、時間が経過し、悲劇の詳細を知らない人も多い。
人もヒグマも世代交代が進んだ。彼らはどんな生き物なのか。共存への道筋を含め、学び直す必要もありそうだ。(水)