自分のことを「独りぼっち」とばかにしていると思った―。長野県中野市で25日、散歩中の女性2人と警察官2人が殺害された事件で、逮捕された31歳の容疑者は県警の調べにそう話したという。
社会学者の上野千鶴子さんが「おひとりさまの老後」を出版してから15年以上がたつ。結婚していようがいまいが、世界一長生きの日本の女性は、最後はみんな「おひとりさま」になる、という趣旨。有料老人ホームで暮らし、2021年の女性の平均寿命87・57歳をとうに過ぎた母も当然のように、父が亡くなってから10年以上おひとりさまだ。
長い間、一日3食を食堂の同じ席で取っていたが最近、別の席に移るよう言われ、隣でいつもおしゃべりしていた人と離れて「一日中、誰とも一言も口をきかない」という。「どうして」と尋ねても「さあ」と首をひねるだけ。厳しく黙食が求められていた時期を過ぎてからの「席替え」の理由は不明だが、ますます脳が衰え、孤独感を深めるだろうことは想像がつく。
容疑者の「逆恨み」を理解できるはずもなく、絶対に許すことはできないが、年齢や性別にかかわらず「独り」が悲しかったり、苦しかったりしない世の中にしなければと思う。(吉)