神戸市で1997年に起きた連続児童殺傷事件などの裁判記録が廃棄されていた問題で、最高裁は25日、経緯についての調査結果と再発防止策を盛り込んだ報告書を公表した。調査した約90件の大半は特別保存(永久保存)が検討されず機械的に廃棄されていたことが判明。最高裁は記録を「国民共有の財産」と位置付け、内規に保存の意義を明記する方針を決めた。
報告書は、最高裁が記録保存の適正化を図るための指導をしていなかったと認め、「一連の問題は最高裁による不適切な対応に起因する」と結論付けた。記者会見した小野寺真也総務局長は「後世に引き継ぐべき記録を多数失わせてしまったことを深く反省し、事件関係者を含め国民の皆さまにおわびする」と謝罪した。
少年事件52件に民事裁判を加えた計約90件の廃棄について経緯を説明。連続児童殺傷事件は神戸家裁で特別保存が検討された上で、当時は少年事件記録が非公開だったことなどを理由に廃棄に至ったことが判明した。他に、長崎県佐世保市の小6女児同級生殺害(2004年)など3件も、特別保存検討後に廃棄されていた。
一方、残る80件余りは特別保存が十分に検討されず、多くは記録が保存されていること自体、認識されていなかった。いずれも「判断権者である所長の積極的な関与がないまま、廃棄に至った」という。
こうした調査結果から、裁判所内で特別保存は極めて例外的という考え方が定着していたと指摘。その上で、記録の中に歴史的意義がある「国民の財産」が含まれているとの認識を共有するため、内規に保存の意義を追記する方針を決定した。
現在、裁判所ごとに異なっている特別保存のルールを統一するほか、最高裁に第三者委員会を常設し、廃棄を迷った際などに意見を聴けるようにすることも盛り込んだ。
昨年10月、神戸家裁が連続児童殺傷に関する全ての事件記録を廃棄していたことが発覚し、その後、重要な少年事件や民事裁判の記録廃棄が相次ぎ判明した。最高裁は翌11月以降、弁護士と大学教授による有識者委員会の会合を開き、当時の家裁職員から聞き取りを行うとともに、遺族や学者から意見を聴くなどした。