ウクライナのゼレンスキー大統領が三十数時間の短い日本滞在を終え、ロシア軍の攻撃が続く祖国へ帰国した。大統領は広島の平和記念資料館を見学後、内外の記者と会見した。戦争当事国の大統領の残した平和を求める言葉の意味が時間を経て重みを増して行く。報道された発言の要旨を繰り返し読みながら、大統領の夢や苦しみを想像する時間が続く。
ウクライナの町は資料館で見た原爆投下直後の広島の風景と似ているそうだ。「それでも広島は再建された。同じように私たちウクライナも、町を再建することを夢見ている」「捕虜となっている軍人、民間人、強制移住させられた子どもたちを帰還させたい。戦いに勝利して平和が訪れることが夢だ」。私たちは、夢をどこまで支え続けられるのだろう。
「資料館には子どもたち、まだ小さな赤ちゃんの悲惨な写真がたくさんある。われわれも同様の写真を持っている。私の目には涙しか浮かんでこない。まさに悲劇だ。どうして子どもたちにそんなことができるのか」。鋭い目が、優しい父親の目に変わり潤んで見えた気がした。私たちは、テレビ画面の中に広がる戦火や砲煙の画像に慣れ過ぎていないか。
国内の政治家の関心の焦点は衆院の解散時期に変わったか。気のせいか。(水)