前立腺の病気について触れる前に前立腺とは何かご説明します。前立腺は、男性のぼうこうの出口にあり、尿道を取り囲んでおります。前立腺は精液の一部を分泌し、主に精子の働きを助ける作用をしています。前立腺の内部構造は四つの部位からなり、内側の移行領域が肥大してくると「前立腺肥大症」となり、排尿障害を起こすことになります。外側の辺縁領域に主に発生するのが「前立腺がん」です。
高齢化社会の到来と共に前立腺の病気が増加しつつあることが報告されています。北海道では50歳以上の男性の前立腺検診(札幌医大泌尿器科)の報告によると、何と5人に1人が前立腺肥大症であり、80人に1人が前立腺がんでした。前立腺がんは「21世紀のがん」と言われ、日本でも急激に増加し、進行すれば致命的になるので早期発見が重要です。
一方、働き盛りの青壮年男性を悩ます前立腺の病気として「前立腺炎」があります。前立腺炎は細菌などでも起こりますが、クラミジアなどの性感染症に合併することも考えられます。また長時間の座位での仕事や車を運転する人に多く見られ、ストレスの多い現代社会を反映して増加傾向にあります。
前立腺がんは早期発見が重要で初期には症状がほとんどありません。前立腺がんの早期発見に最も役立つのが腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の血液検査です。早期がんの場合、ロボットによる前立腺全摘術や放射線治療が行われ、完治が期待できます。50歳を過ぎたら前立腺がん検診やPSA検査を受けましょう。
前立腺肥大症はどうやって治すのか? 最初は薬でOKです。薬物治療としα_ブロッカーや5α還元酵素阻害薬などがあります。重症例や効果が不十分な場合には手術が必要です。従来行われている経尿道的前立腺手術(TUR_P)やレーザー前立腺核出術(HoLEP)などがあります。最近、注目されているのが水蒸気による低侵襲前立腺治療法(WAVE)で、高齢者やリスクのある患者でも出血がなく、15分程度の短時間で安全に治療ができ効果が認められております。
前立腺の病気が疑われる場合、泌尿器科を受診しましょう。