新型コロナウイルスの感染法上の分類が5類に引き下げられた8日、社会の慌ただしさをよそに認知症の高齢者らが暮らす苫小牧市澄川町のグループホーム花縁には、穏やかな時間が流れていた。
「正体不明の敵とひたすら闘ってきた3年間だった」。施設を運営する花縁の代表で、総合施設長を務める大沢薫さん(64)はロビーで、入所者たちを見守りながらコロナ禍と向き合った日々をそう振り返った。
花縁は同町の施設の他、ときわ町でグループホームや小規模多機能ホーム、住宅型有料老人ホームを運営する。地域とのつながりを大切にしてきたが、道独自の緊急事態宣言が発出された2020年2月、外部からの立ち入りを一切禁止。入所者の外出イベントも無くし、外部との接触を断ってきた。
大沢さんは看護師としての知識や経験を基に、各施設で懸命に感染予防の指揮に当たった。それでも、ウイルスは擦り抜けるようにして施設内に侵入。初動の隔離策が功を奏しその時は拡大を阻止することができたが、より感染力の強い変異株には太刀打ちできず、昨年末、有料老人ホームでクラスター(感染者集団)が発生した。
5類移行を受けて花縁は4月、各施設の面会制限を解除。ようやく平時の光景が戻り、入所者の生活にも張りが生まれた様子だ。
「コロナ禍は完全に未知の世界。今も自分たちの対応が正解だったのかどうかは分からない」と大沢さん。今もコロナが消えたわけではなく、介護施設における感染予防対策は続く。
「5類移行で各事業所に委ねられる部分が多くなり、難しい判断を迫られることも増えると思う。これまでの経験を生かして対応するしかない」と気を引き締めた。(姉歯百合子)
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3年余りのコロナ禍を福祉や教育、飲食などの各現場はどう乗り越え、何を学んだのかを取材した。全4回。