政府は16日、ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者保護を強化する改正配偶者暴力防止法(DV防止法)を19日に公布することを閣議決定した。施行は来年4月1日。加害者のつきまといなどを禁止する「保護命令」の要件として、物理的な暴力だけでなく、言葉や態度による精神的な危害を加えた。
改正法は12日に全会一致で成立した。小倉将信男女共同参画担当相は16日の記者会見で「配偶者からの暴力の被害に苦しむ方が一人でも多く救われるよう、準備に万全を期す」と述べた。
保護命令は被害者の申し立てを受け、裁判所が出す。改正法では、要件を従来の「身体に重大な危害を受けるおそれ」から、「心身に重大な危害を受けるおそれ」に改めた。
つきまといの禁止期間は6カ月から1年に延長。禁止行為に▽緊急時以外の連続した文書送付・SNS送信▽性的羞恥心を害するメール送信▽位置情報の無承諾取得―などを追加し、被害者本人に加えて被害者の子も同様に保護する。
また、命令違反に対して「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」としていた罰則を、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」と厳しくした。
内閣府によると、DV防止法に基づき地方自治体が設置する窓口には、2021年度で12万2478件のDV相談が寄せられた。件数は近年横ばいだが、精神的DVの割合が多くを占める傾向にあるという。
岸田文雄首相は19日に開幕する先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の討議でも、DV防止を含むジェンダー平等の問題を取り上げる考えを示している。