歯磨きの習慣は、小さい頃に身に付ける大事なスキルです。しかし、歯磨き中に歯ブラシが喉に刺さってしまう事故が起きています。
東京消防庁の報告によると、5歳以下の乳幼児が歯磨き中に歯ブラシでけがをして救急搬送されるケースが毎年30~40件程度発生しています。年齢別では1歳が一番多く、次いで2歳で、1歳と2歳が全体の70%を占めています。この傾向は少なくともこの10年、全く変わっていません。
歩いていて布団が足に絡まり転倒▽ソファーに立って磨いていて転落▽歯磨きしながら勢いよく親に抱き着く▽親が仕上げ磨きをしている時に他のきょうだいがぶつかってくる_などが典型的なパターンです。喉や口に刺さり、集中治療室に入って10日間入院した事例も報告されています。
産業技術総合研究所では、転倒して歯ブラシが喉に当たった場合、喉にどのくらいの力がかかるのかを計測する実験を行いました。1歳児の頭の重さに相当する約2・65キロの重りの先端に歯ブラシを付け、立ったときの口の位置に当たる50センチの高さから落とした場合、子どもの喉に見立てた鶏肉にどの程度の力がかかるのかを測っています。
その結果、約80キロという大きな力が歯ブラシにかかることが分かりました。歯ブラシは折れて鶏肉に刺さっていました。歯ブラシが子どもの喉に刺さる様子がよく分かる実験でした。
事故を予防するには、安全対策が取られた歯ブラシを使うことが大切です。先端が喉に届かないように工夫されている物や、曲がる歯ブラシなどがあります。座って歯磨きをする習慣にするのもよいと思いますが、そこに家族がぶつかったりする可能性もありますので、やはり安全に配慮された製品を使うことが大切になります。
(大野美喜子・セーフキッズジャパン理事、イラストはカモシタハヤト)