保釈中の刑事被告人の国外逃亡を防止するため、全地球測位システム(GPS)端末の装着を可能にする改正刑事訴訟法が、10日の参院本会議で自民、公明両党と立憲民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。2019年末に起きた日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告のレバノン逃亡事件を受けたもので、対策を強化する。公布から5年以内に施行する。
改正法は、裁判所が保釈を決める際、被告人が国外に逃亡する恐れがあると判断すれば、GPS端末の装着を命令できる。空港・港湾などへの無許可の立ち入りや、端末の破壊・取り外しを禁止。違反すると裁判所に通知され、検察官や警察官が位置情報を確認し、身柄を拘束できる。1年以下の拘禁刑の罰則も設ける。
保釈の条件としてGPSを装着させる制度は、米国や英国、韓国などで導入されている。端末は足首に装着する足輪型や腕時計型などがある。法務省は諸外国の例を参考に、具体的な運用方法を検討する。
指定された住居を許可なく離れる「制限住居離脱罪」や、正当な理由なく公判期日に出頭しない「不出頭罪」も新設。それぞれ2年以下の拘禁刑を科す。これまで、保釈中の被告人が逃亡した場合に刑罰を科す規定はなく、制裁は保釈保証金の没収などにとどまっていた。
被告人の親族や雇用主らを「監督者」に選任し、監督保証金を納付させる制度も創設。被告人が逃亡した場合、保釈保証金と共に没収できる。
近年、保釈が認められる割合は増加傾向にある。一方、19年にはゴーン被告のほか、神奈川県や大阪府でも逃亡事件が相次いで発生。法務省が法整備の検討に入った。
性犯罪被害者の個人情報が加害者に伝わることを防ぐため、起訴状や逮捕状に被害者の氏名や住所を記載しない仕組みも導入する。