ふるさと納税制度で多額の寄付収入を得たのを理由に、特別交付税を減額したのは違法だとして、大阪府泉佐野市が国の決定取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が10日、大阪高裁であった。冨田一彦裁判長は、裁判の対象に当たらないとして、市側の請求を認めた一審大阪地裁判決を取り消し、訴えを却下した。
冨田裁判長は、行政内部の紛争は裁判の対象とならないと指摘。交付税の分配を巡る紛争は「国と自治体が行政主体の立場で争うものだ」として市側の訴えを退け、「解決は行政内部の調整に委ね、適正性は国会審議などで確保するのが基本」とした。
泉佐野市は2018年度、ふるさと納税制度で寄付を募り、全国トップの約497億円を集めた。総務省は19年12月、特別交付税額の算定に当たり、寄付金収入を考慮するよう省令を改正。その結果、同市の19年度の交付額は前年度比約89%減の約5300万円にとどまった。
一審大阪地裁は22年3月、省令改正は自治体の特別交付税が大幅に減額される可能性があるとして、「総務相の裁量に委ねるのが適当とは言い難い」と指摘。その上で、省令改正による減額は「地方交付税法が委任した範囲を逸脱した違法なもので、無効」と判断した。
ふるさと納税制度を巡っては、泉佐野市が18年度、返礼品にアマゾンギフト券を上乗せするキャンペーンを実施。総務省は19年6月に始めた新制度で泉佐野市を除外したが、最高裁は20年6月、国の除外決定を違法と判断し、取り消した。
千代松大耕市長は「敗訴は極めて遺憾。判決内容を精査した上で、最高裁への上告の判断をしたい」とのコメントを発表。松本剛明総務相は「判決の詳細について、今後内容を精査する」とした。