大型連休スタートの4月29日、苫小牧港・東港の有料海釣り施設「一本防波堤」を取材で訪ねた。数日前の雨の影響か、水が濁り気味で魚の活性は低い。そうした中で午後、47センチのアブラコが上がり、粘り勝ちの釣果に笑顔が広がった。
この日は曇りがちながら南寄りの風2、3メートルとまずまずの条件。ただし海はやや濁り、クロガシラが時折、釣り人のさお先を揺らすものの全体としては低調に推移した。
初めて一本防波堤を訪れたという札幌市清田区の川上英明さん(85)は、釣り場ゲートにほど近い所に釣座を構えた。海釣りは30年ほど前に日高でやったきりで、その当時使ったグラスロッド2本とスピニングリールを持ち込み、生きたイソメをたっぷりと針に付けて手前に投げ込んだ。
今回の釣行は妻の政子(80)さんの提案。「海が見たくて来たの。安全に釣りができる防波堤が苫小牧にあるから行ってみようって、娘に連れてきてもらった」。姉の城戸和子さん(87)と3人で連れ立って一本防波堤を訪れた。
3人は2時間ほど様子を見ていたものの、魚の反応はまったくない。そろそろ帰ろうかと思ったところで激しく鈴が鳴った。予想以上の大物でリールを巻いても「重くてまったく上がらない」。苦労して寄せた後、水面から数メートル高い防波堤上まで何とか抜き上げた。大物の重さでぐにゃりと曲がったさおのリールを巻くのは容易でない。無理をするとさおが折れたり、糸が切れたりする。英明さんは「太い糸を巻いていたのが良かった」と振り返った。
「釣れると思っていなかったからクーラーもないの」と言ってカラカラと笑う政子さん。氷を買い、保冷バッグに魚を入れて自宅に持ち帰ることにした。「せっかくの大物。煮付けにして食べます」と大喜びだった。
一本防波堤ではこの日、先端寄りのポイントで40センチ級の良型クロガシラやカジカ、マガレイが上がった。釣り場を管理・運営する苫小牧港釣り文化振興協会は「そろそろサクラマスが岸寄りする時期。今後に期待したい」と話している。