大手旅行会社の近畿日本ツーリストは2日、新型コロナウイルスのワクチン接種などに関する受託業務を巡り、80を超える自治体に対して合計で最大約16億円を過大請求していた疑いがあると発表した。大阪府東大阪市や静岡県焼津市などから請け負った業務で不正請求が発覚したことを受け、全社的な緊急点検を行っていた。今後、金額を確定させた上で返還する。
高浦雅彦社長は同日、東京都内で記者会見し、「信頼を裏切った」と謝罪。巨額の公費を不正に受け取った背景について、「コロナ禍で旅行事業が厳しい中、営業目標を達成したいとの思いが強く働いていた」と説明した。不正が組織ぐるみで行われた可能性は否定したものの、受託業務の契約を守る認識が社員に欠けていたと指摘。自治体や企業などを担当する関西法人MICE支店の支店長は不正を黙認した上、一部で業務の実績について改ざんも指示していた。
自身の進退については、親会社のKNT―CTホールディングスが外部有識者らによる委員会で進めている調査の最終報告を踏まえ、「厳正に考えたい」と述べた。
今回の点検対象は、2020年4月から23年3月までの3年間に計762の自治体、公共団体などから受託したコールセンター業務やワクチン接種会場の運営など2924件。
このうち、大阪府や同府東大阪、羽曳野、泉大津各市と河南町、静岡県焼津、掛川両市のほか、公表に同意しなかった自治体を合わせた16自治体に、計約5億8400万円を過大に請求した。いずれも担当者は、スタッフの人数など再委託先に発注した数が、自治体との契約数に足りていないことを認識していた。
また、事務処理の不備などが過大請求につながった疑いのあるケースが、70自治体などに対して最大で計約10億円あった。 この問題を巡り、近ツーを傘下に抱える近鉄グループホールディングス(GHD)は先月25日、KNTの米田昭正社長が近鉄GHDの社長に昇格する人事を撤回。再発防止に当たらせる方針を示している。