最後の曲はE・エルガーの「行進曲『威風堂々』第1番」。小学生から有名なプロ奏者までが大編成で真心込めて演奏し終えると拍手は鳴りやまなかった。後日、出演した苫小牧在住奏者に尋ねると「涙を流しながら演奏した。あんな演奏会は初めて」と感激をよみがえらせた。
千歳市に長く暮らした札幌交響楽団元団員の山崎量子さんが昨年末に89歳で逝去した。追悼のために音楽家仲間や年代多様な音楽の教え子らを含む約100人出演の「ヴィオラ母さん 山崎量子先生お別れ会 メモリアルコンサート」が今月16日に北ガス文化ホール(千歳市民文化センター)で開かれ、鑑賞してきた。
千歳は記者の前任地で、生前の量子さんには何度か取材した。初対面時に名の書き方を聴くと「『量子力学』の『りょうし』と同じ字よ」と言い、からからと笑った姿が思い出に残る。長女は漫画「テルマエ・ロマエ」作者のヤマザキマリさん。演奏会幕間に、愛する母に小学の遠足で持たされた弁当がトウモロコシ2本だったことなど、著書の「ヴィオラ母さん―私を育てた破天荒な母・リョウコ」(文芸春秋)にもある千歳居住時の逸話を数々語った。量子さんが特に好んだという「威風堂々―」。地域にまき続けた音楽の種が壮大に花開いた気がした。(谷)