マイクを握り、声を張り上げる選挙運動というものの経験がない。車の窓から見知らぬ人に、あるいは知人の顔を見つけて手を振ったことも、一度もない。
あるまちの首長さんに、初めての選挙の時の勝利の喜びの記憶を聞いたことがある。首長氏は、立候補者としての選挙経験がまったくなかった。初日は、無反応の人に手を振ったり、壁に向かって言葉をぶつけて、跳ね返ってくるだけの選挙運動がつらかった。「もしや?」と勝利の可能性を感じたのは、告示から数日後だった。北海道の4月は寒いのに選挙カーから見える家々の窓がポツンポツンと開くようになった。窓から家族で笑顔を見せてくれる人も増えていった。演説上手ではない自覚はある。それでも、何をする、何はしない―と有権者に伝えたつもりだ。それが伝わり始めたのだと思う。「あの時はうれしかったですね」
統一地方選は、あすが後半戦の投開票日。告示日に道北では38センチも雪が積もった。その後も寒暖の差が大きく、黄砂の舞う日も多かった。候補者や陣営は思いの丈を十分に訴えることができただろうか。有権者にとっても約1カ月の選挙月間は貴重な学びの時間。住むまちや地域の課題が次々と明らかになった。解決に向けて次は行動を開始する時だ。(水)