(下) 簡単な挑戦で成功実感 ~エクスポージャー療法

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  • 2023年4月19日
51組の家族にエクスポージャー療法などの効果を調べた

  子どもが不安を抱いているとき、簡単なことから挑戦して成功体験を重ね、不安の克服を目指す「エクスポージャー療法」。石川信一・同志社大教授(臨床児童心理学)に詳細を聞いた。

   不安が強いと、子どもはその対象を避ける「回避行動」を取ることが多い。避ければ不安は一時的に小さくなるが、対象そのものは残っているため、しばらくすると再び不安が大きくなる。不安を克服するには、対象にチャレンジする必要がある_という考え方に基づく療法だ。

   「エクスポージャー療法は、日常生活での挑戦と大きく変わりません。一輪車に乗る前は不安でも、少しずつ練習して乗れるようになるのと似ています」

   ただし学校やクラスメートなど外部に問題があって苦しんでいる場合、回避は有効な対応になり得る。エクスポージャー療法は、外部にはっきりした問題がないのに不安を感じているときに取る方法で、見極めは慎重に行う必要がある。

   実施する際は、子ども自身が簡単だと感じるチャレンジから始め、成功を体験することが重要だ。難しいことに取り組んで達成できず、本人が失敗ととらえてしまうと不安が強まるからだ。その場合は「挑戦したことで、今どこまでできるか、課題は何かが分かった」と、良い面を伝えるとよい。

   例えば発表なら、「家庭で練習する」から始めて、「学校の自分の席で立つ」「口を開く」「資料を持つ」「自席で発表する」「みんなの前で発表する」など、そのときできる程度のステップを設定し、少しずつ難易度を上げていく。

   石川教授らが、強い不安を抱く小中学生と家族51組で効果を検証したところ、エクスポージャー療法をはじめとする認知行動療法を8回実施したグループでは、50%で不安が改善された。比較のため実施しなかったグループで不安が改善されたのは、12%にとどまった。また、その後比較のグループにも同療法を施したところ、半年後には全体の66.67%で改善が見られた。

   不安の程度が強過ぎるなど、家庭での対応が難しい場合は、専門家の助けを借りるとよい。石川教授は「不安に悩むみなさんへ」「青少年のための心理療法研究所」などのウェブサイトで情報を提供。著書「イラストでわかる子どもの認知行動療法」(合同出版)でも、同療法の取り組み方を詳しく解説している。

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