人工知能と睡眠時無呼吸症候群 三上(みかみ) 剛(つよし)

  • ゆのみ, 特集
  • 2023年4月15日

  ゆのみの執筆を1年近く続けてきたが、振り返ってみると、高専の教員らしい教育や研究のことをあまり書いてこなかったことに気付いた。そこで、今回は私が現在取り組んでいる研究の一つをご紹介したいと思う。

   私の研究は、人工知能(AI)を用いて、鼻から喉までの気道(上気道)を撮影した磁気共鳴画像装置(MRI)の画像から睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度を予測するというものだ。さらに、そのAIの中身を分析し、重症度を予測する仕組みを明らかにすることで、SASの高度な画像読影診断法を構築する。これが最終的な目標だ。

   プロの棋士は、AIが獲得した人間では思いつかない高度な戦略を取り入れ、将棋の腕を磨いている。同じように、AIの中身から高度な画像読影診断法を構築することができれば、医師によるSASの診断をより高度化することが可能ではないかと考えている。

   しかし、言うはやすしで実はそれほど簡単な研究ではない。睡眠外来の医師の協力を得てさまざまな症例を見てきたが、SASは多種多様な原因が複合的に関わっているので、MRIの画像だけでは重症度の判断がつきにくい場合もある。また、性能の良いAIは内部の構造が複雑なので、それを分析しても人間が解釈できる形で画像読影診断法を構築できるとは限らない。今後、知恵を絞ってこれらの問題を解決していかなければならない。

   AIに限らず情報工学は裾野が広い。さまざまな分野への応用を考えながら、学生と共に研究を進めたいと思っている。

  (苫小牧工業高等専門学校教授)

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