白老町の白老文化観光推進実行委員会(会長・熊谷威二白老町商工会会長)は、町内の各地域を会場に昨年8~10月に開催した芸術祭について収録した「ルーツ&アーツしらおい―白老文化芸術共創 2022年度記録集」を発行した。地域に溶け込んだ作品の魅力や出品作家の思いを掲載しており、編集に携わった同委員会事務局の山岸奈津子さん(42)は「(会場の)空気感などを誌面から感じてもらえれば」と話している。
芸術祭は8月27日~10月10日、町内22カ所を会場に開催。国内外のアーティスト15組が、スーパーの壁をキャンバスにして巨大壁画を発表したり、旧アヨロ鼻灯台を会場にして光のインスタレーションを披露したりしたほか、公共施設で人形劇などのパフォーマンスを繰り広げた。
記録集では、白老で芸術祭が開かれるに至った経緯から説き起こし、作家たちの表情はもちろん、作品に込めた思いや制作に対する姿勢を紹介。作品が並んだ会場の様子などを写真で伝えている。展示会場の地図も収録した。
特集「白老のルーツを探る」は三つ盛り込み、芸術祭の題字「ルーツ&アーツ」を担当した町内の木彫工芸家で喫茶休養林を営む相吉正亮さん(82)と招待作家の伊藤存さん(52)のトークを4ページにわたって掲載した。ほか二つは、表情豊かな土面を町民らと作り上げた野生の学舎新井祥也さん(34)、町内の複数地域でパフォーマンスを展開したおたのしみ劇場ガウチョスのインタビュー。
山岸さんは「読みやすいように、専門用語をできるだけ使わず、分かりやすい言葉でアーティストの思いや作品の制作意図を伝えるようにした」と語り、作品を全て見られなかった人にも作品鑑賞を追体験してもらえるよう、特に地域と深く関わった作家へのインタビューを充実させたという。「芸術祭が、地域の皆さんに『あってよかった』と思ってもらえるイベントになれば」と前を向く。
記録集のページを繰り、伊藤さんとの対談などを振り返った相吉さんは「心のこもったものの良さを知り、創作の楽しみを分かち合える子どもたちが、まちに一人でも多く現れることを願う」と語った。
A5判、44ページ、オールカラー。1200部を発行し、町内の公共施設や近郊の文化、教育機関で配布している。