16歳の頃。ある日、クラスメートが手にしていたのは、とびっきりユニークな挿絵の付いたメモ帳と白に近い金髪の子の写真。フィンランド人の文通相手だという。一瞬にして魅了されてしまった私は彼女に頼みこみ、フィンランド人の友人を紹介してもらった。
慣れない英文手紙に赤いペンでSALMAIL(船便より速く、航空便より安いサービス)と書く。送料は一番安いとたった110円でフィンランドまで届く。「世界には約200カ国あるから、一つの国に1人ずつ200人の友達をつくろう! そうすれば平和に貢献できるかもしれない!」。そう思うと、海外との文通が楽しくて仕方がなかった。
デンマークのアンは仕事先の上司に恋している。ドイツのミヒャエルとはシールやレターセットを交換した。南アフリカ共和国のセシルからの手紙はいつも香水の香りがする。英国のスコットはとてもユニークで、私の誕生日に大きなシルクハットを贈ってくれた。
そして、自分が通っている小学校の図書館で銃の乱射事件があった米国のサラ。内戦で家族とはぐれ、トーゴからガーナへ移住した10歳のマイク。さまざまな背景を持つ友人たちとのやりとりの中で、ふとこう思った。
遠い海外に住む人たちと仲良くする前に、私は今、周囲の人と仲良くしているだろうか?
身近な人の嫌なところに目くじらを立てているようでは世界平和なんてほど遠い。平和を願うなら、まず隣にいる人の話を聞こう。その人を受け止めよう。そう思った。
(NPO法人木と風の香り代表・苫小牧)