新大学生らに朝食スキルを 欠食は体力、知力に影響

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  • 2023年4月6日
安く簡単に作れ、ある程度栄養の取れるメニューを教えることも大切だ

  健康な生活を送るために、朝食は大切だ。だが、朝食を取らない人の割合は高校を卒業する頃に急に上がり、40代まで高い状態が続く。立命館大食マネジメント学部(滋賀県草津市)の保井智香子教授(応用健康科学)は「高校卒業後、栄養教育を受けることが必要です」と話している。

   厚生労働省が2019年に実施した国民健康・栄養調査によると、朝食を食べない人は全年齢の平均で12%強。14歳までは5%を下回っているが、高校を卒業する年齢に当たる18歳ごろから急に上がり、20代では男性27・9%、女性18・1%に達する。30~40代でも男性3割、女性2割と、高い状態が続く。

   「高校生までは家族と暮らし、朝食が用意されている場合が多いと考えられます。卒業後に1人暮らしを始めると、ぎりぎりの時間に起き、朝食を作る時間がないまま自宅を出る人が増えるのではないでしょうか」。家族と住んでいる場合でも、通学・通勤時間が長くなると欠食率が上がる可能性がある。

   40代にかけて欠食率が高止まりする理由としては、仕事や子育てで忙しくなることの他に、若いとき身に付いた欠食の習慣が続いていると考えられるという。

   だが、朝食を食べないと、「1日に必要なエネルギーや栄養素が不足しやすい」。文部科学省の全国学力テストや全国体力テストでは、朝食を毎日食べる子どもは正答率が高く、体力がある傾向が見られている。

   保井教授らの研究グループは22年、大学生と大学院生の男子86人を対象に、朝食を取った日と取らなかった日の違いを調べた。朝食を取る習慣のある学生は、簡単な計算を繰り返させる心理検査「内田クレペリン検査」で、朝食を取らなかった日の精神健康度が低かった。日ごろ朝食を取る習慣のない学生も含めた全体で、朝食を取らなかった日は体温が低く、疲れやすかった。

   欠食を防ぐには、「大学の講義や新入社員研修で、朝食の重要性を知らせる栄養教育を行うこと。安く簡単に作れ、栄養を取れる食事についても教える必要があります」。

   家庭でも、子どもの頃から一緒に食材の買い物に行ったり、簡単な料理を考えて準備したりする経験を積ませるとよい。大学食堂で安価な朝食を提供するなど、環境を整えることも大切だ。

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