夜なべ

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  • 2023年4月5日

  先月の全国紙に「日本女性 世界的に短い睡眠」という特集記事があった。示された経済開発協力機構の2021年の調査によると日本人の平均睡眠時間は7時間22分で調査33カ国中最短とか。女性は男性より、さらに13分短かった。棒グラフを見ると、中国やアメリカ、フランスなどは女性の方が睡眠時間が長い。

   日本の女性の家事負担の重さが背景にあるという。例として示されたのは40代後半の女性の一日。夫の帰宅は午後10時ごろ。夕食を出して食器を洗い、寝るのは、午前0時ごろに受験生の長男が入浴した後。朝は午前7時に夫が家を出るため6時に起床して朝食を作り、家族を送り出してからパート勤務。帰宅後はまた夕食の準備―。すさまじい。子育てが一段落すれば次は介護が責務に加わる。

   「かあさんの歌」を思い出した。「かあさんが夜なべをして 手袋あんでくれた―」。届いた手紙からは、いろりのにおいがした―と歌う。進学や就職などで親と離れた子どもが、ふるさとや優しい母を思う歌。もう単純に懐かしんでいられる時代ではないのか。「かあさんはいつも寝不足で疲れている」では歌になりにくい。せめて国の子育て支援が前宣伝通り実現すれば、少しは睡眠時間が長くなるのだろうか。考えさせられた。(水)

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