知床半島沖で昨年4月、観光船「KAZU 1(カズワン)」が沈没した事故を受け、国土交通省は4日、2025年度以降に新造されるカズワンと同じ小型旅客船などを対象に、甲板下の区画での浸水拡大を防ぐ「水密隔壁」の設置を義務付けると発表した。高波による同区画への浸水を防ぐため、船全体の甲板水密化も求める。
既存の船は新たに水密隔壁を設けるのが難しいため、排水設備や浸水警報装置の設置を義務付ける。
国交省によると、カズワンの航行区域は、湾内と目的地を2時間以内で往復できる「限定沿海」に分類される。現行規則は、限定沿海を航行する小型旅客船に水密構造の隔壁の設置を求めておらず、甲板についてはハッチなど船首部のみ水密化が義務付けられている。
関係者によると、カズワンの甲板下の隔壁には作業をするために穴が開いていた。運輸安全委員会は昨年12月、船前方のハッチから入り込んだ海水が隔壁の穴を通じ、エンジンがある機関室に広がった可能性があるとする調査経過報告書を公表した。同委員会はカズワンと同じ限定沿海を航行する小型旅客船について、隔壁の水密化を検討するよう提言していた。
国交省は提言を受け、今年2~3月、有識者検討会を設置し、小型旅客船事故の分析や安全対策の検討を行った。この結果、08~18年に発生した小型旅客船事故約230件のうち、座礁や衝突、接触によるものが約%を占め、これらの要因で浸水した場合には水密隔壁の設置が最も沈没を防ぐ効果が高いと判明したという。