「目指すのは、地域に根差し、信頼される郵便局」―。それをモットーに、これまで8カ所の郵便局を渡り歩きながら、住民との触れ合いを大切にしてきた。入局44年、局長になってから20年。郵便局にささげてきた人生の歩みを振り返り、「地域社会に役立っていると感じられる仕事に就けた自分は幸せ」と笑みを浮かべる。
高度経済成長期の真っただ中の1960年、自然豊かな大滝村(現伊達市大滝)で3人兄弟の末っ子として生まれた。子どもの頃は、昆虫取りや釣りが大好きなわんぱく少年。大滝中学校に入学後、軟式野球に打ち込んだ。
曽祖父が郵便や運送を担う駅逓で働き、祖父も大滝郵便局で勤めていた縁から、79年に伊達高校を卒業後、郵便局に就職。旧虻田町や旧洞爺湖村の局に勤めた。84年に結婚し、3人の子宝に恵まれた。
92年、苫小牧港を中心に発展を続ける苫小牧市の苫小牧中野郵便局へ転勤となり、一家で移り住んだ。当時の局長は元力士で「ちゃんこ鍋を振る舞ってくれた」と懐かしむ。95年12月に見舞われた記録的な大雪で「郵便配達に甚大な影響が出たことも忘れられない」と回想する。
その後、白老町の虎杖浜郵便局や追分町(現安平町)の追分郵便局などに転勤。地域住民のさまざまな要望に応えたり、相談に乗ったりと「顔が見えるコミュニケーションを大事にしてきた」と話す。
2003年、苫小牧澄川郵便局2代目局長に就任した。「地域の町内会や住民からさまざまなサポートを受けた」と言い、恩返しにと05年から地域でごみ拾いを始めた。
その頃は郵便局にとって激動の時代。当時の小泉純一郎首相が推進した郵政民営化法が05年に成立し、07年10月から民間の日本郵政グループの一員となった。民営化で求められたのは利潤追求。「黒字経営を図るという使命に応えていけれるのだろうか」と不安が押し寄せた。そうした荒波の中でも、頑張り続けることができたのは「地域住民や職場の支えがあったから。いろんな人との出会いに恵まれた」と思っている。
堅実な仕事ぶりが評価され、17年から3年間、苫小牧市内全22局の代表局長を務めた。業務品質の高さにより、本社から表彰も受けた。19年に現職の苫小牧桜木郵便局長に就任。この春で5年目を迎える。
苫小牧桜木郵便局でも続けているごみ拾いは、4年間で557回に及ぶ。「郵便局が地域に貢献する。これからも、それを大事にしていきたい」。支えへの感謝を胸に、きょうも市民の暮らしに欠かせない郵便業務を切り盛りする。
(倉下鈴夏)
◇◆ プロフィル ◇◆
原 敏彦(はら・としひこ) 1960(昭和35)年5月、大滝村(現伊達市大滝)で生まれる。現在、苫小牧桜木郵便局の4代目局長を務める。趣味はオートバイでのツーリング。苫小牧市三光町在住。