NHKの朝の連続ドラマ「舞い上がれ」が今週で終わる。仕事が休みの平日の朝、家人に付き合って見ることがある程度だが、ヒロインがパイロットの夢を断念して家業の町工場の再建や、航空産業への参入に向けて他の町工場と協力して奮闘する辺りで興味を感じた。最終盤は学生時代の仲間らと共に「空飛ぶクルマ」への挑戦が描かれていてワクワクする。
舞台の中心は東大阪市。30年ほど前、取材で訪ねたことがある。道内企業が、自動車産業に参入するための課題を探るのが目的だった。トヨタ自動車北海道が苫小牧に進出した頃。東大阪は、阪神工業地帯を支える中小の町工場が街中に軒を連ねていた。電機や自動車の生産工場に部品を供給する町工場、金属加工の中小企業を視察する経済団体に同行して取材した。小さくても技術力の光る町工場は、「人の感覚は機械の精度を超える」と言い切るほど高い技能を持つ職人や、固有の技術を必ず大切にしていた。
中小企業は数の割合で99%を超える。国の経済と多くの人の暮らしを支えるが、実態は人材不足と後継者難が深刻だ。個々の企業努力は必要としても、この春闘で大企業の賃上げの様子を聞けば中小企業、特に地方で感じる格差と危機感は一層膨らむ。政策の支援が必要だ。(司)