数年前、兵庫県西宮市在住の知人宅に数日お世話になった。ベランダからは工業地帯と海が見渡せ、潮風が気持ちよかった。
しばらくベランダでのんびりしていると、遠くからかすかに歓声らしき声と何やら音楽が途切れ途切れに聞こえてきた。「何? 運動会?」。聞くと、甲子園球場の応援で、風向きによってはよく聞こえる日もあるという。
春の陽気と好天に誘われ、知人宅からのんびり歩いて20分。雑踏の阪神甲子園駅を抜けて球場に着くと内野席から観戦。甲子園は取材で一度来たことがあったが、この日は気温も18度ほどあって春の日差しが心地いい。一塁側から三塁側のアルプススタンドを見ると、真っ赤に統一された応援が華やかに見え、ブラスバンドの音量にも圧倒された。バックスクリーンも青空に映え、バタバタする取材ではなかなか目に入らない光景から高校野球の雰囲気を味わった。
18日に開幕した選抜甲子園は2年ぶりに声出し応援が解禁されている。北海道のクラーク記念国際は初戦で散ったが、大きな声援は選手の力になった。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の余韻も残る中、甲子園は準々決勝へ。春はセンバツから―。(高)