苫小牧産ホッキ貝の殻を創作作品に生かす東芸会木目込人形・押絵、本部講師の吉川芳孝(本名・孝子)さん。ある日、自宅のベランダに並べていた貝殻が風雨にさらされ白くなったのを見て、心身が清められたような気がした。この貝殻を使って世界でただ一つの人形を作りたい―と思い立った。
ホッキ貝を使った作品で代表的なのは、12年かけて制作した大作「ホッキ貝15人揃(そろい)ひな」。培ってきた木目込みの技術がふんだんに生かされ、粘土状にしたおがくずで覆った胴体には、華やかな着物の切れ端が丁寧に織り込まれている。ヒノキで作られたこだわりの台座は特注で宮大工に依頼した。
2000年には、苫小牧市民親善訪問団の一員として姉妹都市のニュージーランド・ネーピア市を訪ねた。ホッキ貝を使った作品としては第1号の別のひな人形を同市へ贈った。
「苫小牧の名物をいかに人形で表現できるかと考え、愛情を込めて創作した。世界で唯一の作品だし、自分の作品が一番」とにっこり。深い思いと技術が詰まった作品の手入れをしながら、歩んできた道を振り返った。
メ モ
苫小牧市出身。夫の転勤で移り住んだ先で木目込み人形作りに出合い、1973年に東芸会に入会。コンクールで数々の賞を受賞したほか、講師としても活躍。
大作の「ホッキ貝15人揃ひな」と吉川さん