人口動向は出生・死亡・移動の3要素で決定され、移動はさておき、出生数減と死亡数増が日本の人口減少の原因とされる。
高齢化に伴い亡くなる人が増えるというのは自然のことわりだが、長生き自体は生活水準の向上など社会の蓄積の成果であろう。結婚した夫婦の子供の数は1・94人(2015年)と人口維持可能な出生率(2・07)には及ばないものの一定の水準にあることから、出生数減の大きな原因の一つは「未婚化・晩婚化」とされる。この背景には若年層の雇用・所得環境の不安定さなど経済的な問題もあるだろう。
未婚化・晩婚化の傾向を1970年と2020年で比較すると、(1)50歳時未婚割合は男2%→28%、女3%→18%、(2)平均初婚年齢は夫27歳→31歳、妻24歳→29歳であり、特に未婚割合の上昇には驚かされる。ちょっと古いが18年のNHKの調査では、(1)結婚するのが当たり前は45%(1993年)→27%(2018年)、(2)結婚したら子供を持つのが当たり前は54%→33%と、「当たり前」の感覚も大きく変化している。
中央大学の山田昌弘教授(家族社会学)は、未婚化・晩婚化の背景に、交際から老後まで周囲に恥ずかしくない人並みの中流生活を絶対条件として、そのリスクを排除できない限りは「お付き合い」にさえも踏み切れない日本人特有の「リスク回避姿勢」と「強い世間体意識」がある、と分析している。
人口動向の変数は三つだが、その背後には、経済環境、社会制度、「当たり前」を含む人々の意識など多くの複雑な要素が絡み合い、現状を変えるには、この複雑な方程式を解く糸口を見つけなければならない。「お金」も確かに大事だが、それだけの問題でもなさそうだ。(苫小牧港開発社長)