政治の劣化が著しい。そう思わせるのは、放送法が定める政治的公平性の解釈に関する総務省文書を巡る高市早苗経済安全保障担当相の国会発言だ。
2015年5月に当時、総務相の高市氏が放送法の政治的公平性に関し、「番組全体を見て判断する」とする従来の解釈に加え、「一つの番組でも判断できる」と答弁、法解釈の基準を見直す考えを示した。この解釈見直しは、当時の首相補佐官からの働き掛けで検討が進み、同2月に総務相に報告されたとし、その経過を文書4ページに克明に記している。
その真偽を尋ねる野党議員に、高市氏は文書を「全くの捏造(ねつぞう)だ」とし、質問者に「信用できないなら質問しないで」と強弁。丁寧な説明とは程遠く、質問封じとも取れる発言が飛び出した。総務省幹部は、正式な行政文書と明言したが、内容の正確性や筆記者は「調査中」という。問題の大きさにあいまい決着の道を探っているかのようだ。
当時総務省内でも疑義のあったとされる解釈変更。内容は、政権に不利な放送をするテレビ局に対し、行政権限で停波もできるとの脅しともとれる。行政による番組チェックは、憲法が禁止する「検閲」につながる恐れもある。民主主義の根幹が問われる重要な問題なのだ。(教)