「春闘ベア 満額続々」「低所得世帯に3万円 子育て中なら上乗せ」。新聞に連日、心強い見出し。きょうは「男性育児休暇 30年度85%に」。国民の苦しさが、政治にようやく伝わったのか。
きのう、岸田文雄首相が記者会見して懸案の子育て支援、少子化対策の概要を説明した。育休の取得率上昇を目指すだけでなく、収入減を補う給付など国と企業の連携による異次元ぶりの説明だ。
この数日、手元にあった新潮文庫「老後破産 長寿という悪夢」をたまたま読んでいた。NHKスペシャルの番組取材班がまとめた、東京の独居高齢者の現実が描かれている。冒頭に登場するのは電気を止められてエアコンを使えず、ドアを開け放して室内の温度を下げ、テレビニュースは集会施設へ出掛けて見る80代の男性の話だ。年金支給日の直前、暗闇の中でガスの炎を頼りに「非常食」の冷や麦をフライパンでゆでる様子が描かれている。老いや病気、配偶者との死別のすぐ先に、食費1日100~200円の世界が広がる。それがこの国なのだ。
少子化対策や子育て支援は今「政治の流行」なのかもしれない。高齢化や病気など、不安は他にも山ほどある。札幌ではきのう、不安に駆られて88歳の妻を殺した容疑で89歳の夫が逮捕された。(水)