1月下旬、1羽のオオコノハズク(フクロウ目フクロウ科)がウトナイ湖野生鳥獣保護センターに搬入されました。
このオオコノハズク、数日前から市内のとある店舗内に迷い込んでしまい、外へ出られなくなってしまったとのことでした。このように、野鳥が倉庫や車庫などの建物に迷い込んでしまう事例は時折発生し、当センターでも相談を受けることがあります。
その際は、まずは野鳥が自ら脱出できるように窓や扉を開放していただくようにお伝えをしています。そして、人が窓や扉の方へ誘導しようと追ってしまうと、野鳥がパニックになり建物内で衝突事故を起こすこともあり、なるべくそっとしていただいています。しかし、建物が広い、複雑な構造をしている、また管理上窓や扉を開放できない等、脱出が困難なケースもあります。そのため、何日間も餌を食べることができずに徐々に衰弱し、死亡してしまうこともあるのです。
今回のオオコノハズクも、店舗に迷い込んでからすでに数日間が経過していたのですが、建物内を飛び回っている際に壁に衝突。床に落ちたことで、ようやく保護に至りました。
しかし、保護センターに搬入された時の状態は思わしくありませんでした。著しく衰弱しており、目を閉じたまま動けない状態でした。また、餌を食べていなかったために、体重はわずか96グラム。本種の平均体重120~200グラムをかなり下回っていました。
私もこれまで30羽以上のオオコノハズクの保護経験がありますが、これほどまでに減った体重を見たことがありませんでした。直ちに餌を与えたいところではありますが、衰弱している体に急に餌を多く与えてしまうと負担になり、かえって悪影響となります。そのため時間をかけ、かつ確実に体力が付くよう餌の量を加減しながら、治療に当たりました。そして保護から約1カ月後、160グラムほどまでに体重を増やしたオオコノハズクは無事に自然界へと羽ばたいていきました。
ただ迷い込んでしまうというだけで、時には命にも関わることもある事故。野鳥にとって人が造り上げた建物は出口の見えない迷宮そのもの。まずは侵入を未然に防ぐことが要となります。窓や扉の開閉時には、周囲の環境に応じて開放したままにしない等、注意を払っていただけたら幸いです。(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)